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2005/02/24 「ネアンデルタール人の正体」

寒い日が続くとぼやいてたら、昨日は急に春の陽気。今日も気温は下がったとはいえ、先週に比べたらずっと暖かい気がする。春はもうすぐそこまで。

「ネアンデルタール人の正体」(赤澤 威編著/朝日選書)読了。人類の進化については昔から興味があり、朝日選書では他に「ネアンデルタール人とは誰か」という本も読んだことがある。

この本は、シンポジウムの内容をまとめたもので、それぞれのテーマは面白いものの、一人の著者が書いたような一貫性はなく、悪く言えば散漫。内容もさほど専門的な内容ではないが、まあ、読むこっちも専門家でないからこんな程度でも十分。この本によると、すでにネアンデルタール人の化石骨からDNAが抽出されて分析が行われている。10万年くらい前までなら抽出が可能なのだそうである。北朝鮮から持って帰った骨のDNAくらい鑑定できて当たり前だなあ。

4体分のミトコンドリアDNAの解析結果が出ているのだが、特徴をグラフにプロットするといわゆる現生人類のサンプル標本群とはかなり離れたところに位置する。まだ確固たる結論ではないものの、ネアンデルタールは現代人の祖先ではなく混血もしていない可能性が高い。

化石や遺跡から見る限り、ネアンデルタールとクロマニヨンの生存した年代は一部重なっており、現生人類にもネアンデルタールの血が一部流れているのではという仮説もあったが、やはりありえないか。外見からするとネアンデルタールの血を受け継いでいるようなのが今でもいるけどねえ。

ネアンデルタール人が言語を使用していたかどうかは不明だが、石器は作っており、洞窟に住み、死者を埋葬する習慣があった。ネアンデルタール人の化石がよく保存されているのは、この埋葬の習慣からだということである。ネアンデルタール住居跡の洞窟から、多数の花粉が存在する埋葬穴が見つかり、埋葬の際に花を手向けたという説がある。

我々の直接の先祖ではないかもしれないが、現生人類と遠い昔に枝分かれした親戚筋。死者を埋葬する際に、その妻が、あるいは恋人が、あるいは両親が、その死を悼み、腕一杯の花を死者に捧げたとしたら、彼らは我々にも十分理解できる心性を持っていたということである。

しかし、この本の注記によると、花粉は洞窟に住むげっ歯類が運び込んだなどという反論が最近では提示されているらしい。もっとも他の埋葬穴には花粉は無く、まだ論争は続いているとか。まあ、実際には洞窟にいたネズミが運んだ花粉かもしれないが、なんとも夢を壊すような反論なんだよな。う〜む。