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2004/01/10 「はじめての死海写本」

「はじめての死海写本」(土岐健治/講談社現代新書)読了。マイケル・ページェントの「死海文書の謎」は写真が沢山収載されているところが面白かったが、この本は死海文書にまつわる歴史や内容を簡潔にまとめてあり読みやすい。

「死海文書」とは、名前からして秘密の内容が書かれているような印象であり、政治や宗教の壁に阻まれ、翻訳や公開が遅れに遅れたことから、内容について幾多の無責任な噂が生まれた。しかし、現在の学問的研究の成果からすると、このクムラン洞窟で発見された、紀元前3世紀から紀元後1世紀後半に成立した文書には、従来のユダヤ教やキリスト教に大打撃を与えるような秘密の内容など含まれていないというのが結論。

しかし、厳格な共同体規則や「義の教師」への言及など、2000年以上も前から信仰と神を求めて止まない人間達と、その原始教団の姿を彷彿とさせる文書が2000年の時を超えて発見されたという事実そのものに歴史的意義がある。

クムラン文書は、旧約聖書の現存するテキストとしても世界最古のもの。しかし、この本によると現存するテキストとはかなり相違があり、旧約の文書成立当初には、テキストにかなりの流動性があったことを示しているのだという。一時話題になった「聖書の暗号:バイブルコード」は、モーセ五書は神の作った文書で一語一句も相違なく過去から現代に伝わっているということを暗号の根拠にしている。2000年前のテキストに異同があるとすると、その根拠の一角が大きく崩れるということになるのだが。いや、まあ、もともとアテにならない話ではあるのだが、「聖書の暗号」。