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2003/09/10 「9・11 陰謀は魔法のように世界を変えた」

「9・11 陰謀は魔法のように世界を変えた」読了。題名だけ見て著者も見ずに買ったが、表紙をよく見て「あっ、しまった」と気づく。ジョン・コールマン著、太田龍監訳というのは、「300人委員会」で悪名高い、「世の中の悪いことはすべてユダヤ人の陰謀」説を唱える「トンデモ」系の本である。中身は、これでもかと続く出所不明のヨタ話の連続。同時多発テロの日、WTCに突っ込んだジェット機は、実はアメリカ政府によって遠隔操縦されており、WTCの崩壊も内部に仕掛けられた爆弾のせいだというのだが。

信じるにはあまりにも荒唐無稽な本。しかし、確かに軽飛行機の操縦訓練程度しか受けてなかったテロリストが、自分達であそこまでジェット旅客機を操縦できたのは、実に不思議な話ではあった。実際になにか隠された事情でもあるのか。

この本に書かれている「事実」と称する出来事は、出所不明で信用できない怪しげなものが多いのだが、ひとつだけ妙に心に残ったエピソードがある。911テロの容疑者のうち2名は、9月8日の夜、ストリップ・バーで一晩中泥酔し、名刺とコーランを置き忘れていったと。

著者コールマンは、敬虔なイスラム教徒がそんなことをするはずはない。だからこれはイスラム教徒を犯人にしたてる芝居だと推測する。しかし、飛行機で自爆して死ぬのが自分の運命だとたとえ受け入れてはいても、最後の日の前には誰しも自暴自棄になり、ひょっとすると泥酔するまで飲むのではなかろうか。コーランや名刺を置き忘れていったのも、おかしいといえばおかしい。しかし、彼らは多分、誰かに自分達を覚えておいてもらいたかったのだ。明後日はすでに死ぬことが決まっているそんな日に、この場所に彼らがいたことを。狂信の殺人者すらも人間であった。これはそんなエピソードのように感じるのだが。