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2003/05/08 「時の廃墟」 死臭がするの

沢木耕太郎のノンフィクション全集、「時の廃墟」に、「奇妙な航海」という一編がある。逮捕直前のロス疑惑、三浦和義に密着したルポ。奇妙な形で時の人となった三浦は、雑誌の企画でおふざけのSMグラビア撮影などにも登場する。撮影の相手となった予知能力があるという女性ヌードモデルは、三浦のことについて沢木にこう話す。「捕まるのね、あの人。そしてもう戻ってこない」。理由を問う沢木に彼女はぽつんとこう言う。「死臭がするの」。

このくだりは、雑誌に掲載された1985年当時に読んで、背筋がぞっとした記憶がある。しかし、予知能力というものもアテにならんなあ。最高裁まで行って、この3月に逆転無罪確定。三浦和義は、なんとキチンと娑婆に戻ってきてしまったのであった。悪運強いというかなんと言うか。

しかし、この三浦和義が、港区の本屋で雑誌を1冊万引きして逮捕されたという今日のニュースには笑った。レジが混雑してたのでつい面倒になったというが、心底からモラルというものと無縁のこの男の正体をよく現したエピソードだ。もっとも不起訴になるらしいが。

私の中では、この「ロス疑惑」事件は、O・J・シンプソン事件と重なる。証拠不十分で無罪となったが、彼は必ずやっている。やってないはずはない。どう考えてもそういう気がする事件だった。