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2002/12/03 「田口ランディ盗作の研究」〜「2ちゃんねる」の正義

「田口ランディその「盗作=万引き」の研究」(大月隆寛編/鹿砦社)を読んだ。たいへんに分厚い本だが、途中で読むのがイヤになった。いや、イヤになったのは、本が分厚いからではなく、筆者達の品性が下劣で、書いてあることがクダラナイから。

田口ランディは、「インタネットの女王」なる異名を持ち、メールマガジンなどから彗星のごとく飛び出してきたベストセラー作家である。直木賞候補にもなったのだが、対象作の「モザイク」を含む小説群やエッセイに、他人の著作からの盗用部分があることは、昔からささやかれていたらしい。

「2ちゃんねる」やら「サイバッチ」で叩かれたのをきっかけに、盗作疑惑に本格的に火がつき、大手メディアで取り上げられるにおよび、本人も無断使用を認め謝罪し、作品を改定することになった。この本は、その田口ランディの盗用事件について、いろんなライターがよってたかって田口ランディを叩きに叩く本である。

「サルを哀れむ歌―万引き作家のステキな世渡り」、「なめとんのか、オラ!―リライト不可能の超悪文!!」、「史上最悪!「コラムストーカー」の実態」、「もう二度と田口にだまされないために」などと並ぶ目次を見ても分かるとおり、聞くに耐えない罵詈雑言を並べているライターが多い。それなりに文筆で実績ある者が言うならわかるが、自称ライターでもシロウトに毛が生えたようなのが、居丈高になって、叩きに叩いているというのも、なんだかあんまり気持ちのよい風景ではない。

別に、田口ランディを弁護してるわけではない。私自身は、彼女の著作を読んだことないし、これからも読むことはない。本人が認めてるのだから、引用の範囲を超える無断使用があったのは真実で、これは大変にマズいことである。文筆で稼ぐ世界からは消えて行けばよかろう。

しかし、この本に喜んで参集して、田口ランディを叩きに叩いている三文(or自称)ライターは誰も、やっつけ仕事の時に、他人の著作からアイデアをちょっと拝借したりしてないのかね。したいと思ったことすらないだろうか。この本の口汚い罵りや、どうでもよいことまで、「そういえばこんなことがあった」なんてあげつらう態度を見ていると、叩きに集まったライターにも、自省とモラルがあるとは思えないのだが。

クリスチャンではないが、こういう時に思い出すのが、「whichever one of you has committed no sin may throw the first stone at her」(お前達の中で罪を犯したことがないものが、まず石を投げればよかろう)という、福音書ヨハネ伝8章の言葉だ。人生ではもちろん、文章を書く上でも、こういう内省、自省の不在は、実は「文章の盗用」と同じくらい恥ずべきことだ。

しかし、この本で田口を叩いているライター達は、きっと、「2ちゃんねる」でも、さぞや口汚い罵りの言葉を、匿名で一心不乱に書きこんでいたに違いない。それが、田口ランディの成功に対する「妬み」から来ているということも、なんとなく推察できる。

「『2ちゃんねる』の正義」(ま、万一、そういうものがあったとしてだが)には、饐えた腐敗臭があり、声高に語るには、どうにも恥ずかしいものがあるのは、そういうところだ。