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2002/03/17 「まれに見るバカ」

「まれに見るバカ」(勢古浩爾/洋泉社)読了。昨日寄った、神保町三省堂では、あちこちで平積みになってたが、売れてるのかね。

これは、著者が「バカ」と思った人間を、有名無名を問わずにメッタ切りしてゆくという本であるが、、なかなか痛快。

「宮代真司のタフネスは、"弱虫は泣いてからが強い"という弱虫の強さ」
「小室直樹の経歴と該博な知識はダテではないが、自分の意見を表明しはじめると、とたんにバカになる」
「田嶋陽子は、傲慢で自己陶酔するバカ」


と、有名人に貼る「バカ」のレッテルは、たいへん的確である。「バカ」談義は著名人だけにとどまらず、「街で怒鳴るババア」、「子供にホステスの源氏名のような名前をつけるバカ親」、などの一般人バカにまで及ぶ。

批評と悪口の差には微妙な部分があって、単なる悪口雑言であれば読むに耐えない。しかし、この本が、あちこちの「バカ」をあげつらいながらも、不思議に爽やかな読後感を残すのは、著者が自分をエラク見せるために他人の悪口を言ってるのではなく、その視点が、あくまで常識的に社会で生きている市井の一般人のレベルにあるからだ。いわば、正統派床屋談義の「正論」とでも言おうか。

真面目に生きている常識人であれば、誰でも薄々とは感じている違和感、なにかこれはオカシイ、といった感覚が、著者の「バカ」という総括で、見事に描き出されている。一歩間違えれば「人生幸朗のボヤキ漫談(懐かしいな)」になりかねないものを、一応ちゃんとした軽い批評として成立させているところに、著者の芸があると言おうか。

どこかで読んだような雰囲気だなと思ってたら思い出した。故伊丹十三の、物の道理やプリンシプルを重視したストイックなエッセイと、主張の底にあるトーンが似てるのである。

例えば、佐高信の人物批評は読むに耐えないが、それは、そもそも、佐高が人を叩く動機が、彼個人のネタミやソネミに起因しておりそこに彼の品性の卑しさがそのまま出ているからである。この本は、そういうレベルを突き抜けて読み物として成立している。そこがなかなか面白い。