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2001/07/10 「人類の起源論争〜アクア説はなぜ異端なのか」

「人類の起源論争〜アクア説はなぜ異端なのか」(エレイン・モーガン/どうぶつ社)読了。人類が、なぜサルから分かれてホモ・サピエンスになったかというのは、進化論の中でも積年の疑問である。

この本で取り上げている「アクア説」というのは、なんでおサルさんは全身の毛がフサフサなのに、ホモ・サピエンスは体毛が少なく、いわゆる「裸のサル」になってしまったか、という疑問に対するひとつの解決である。

ホモ・サピエンスがサルから分かれて進化した説明として、「サバンナ仮説」というのがある。

アフリカ東海岸は、古代の気候変動で、森から広々としたサバンナに変わった。森に住んでたサルのうち、勇敢にもサバンナに出ていったサルは、遠くを見るために直立歩行するようになり、暑さをしのぐため毛皮を脱ぎ捨て、狩りをするようになって知性と文化をはぐくんでいった、というのがいわゆる「サバンナ仮説」なんだそうだ。

しかし、この仮説にも色々と疑問がある。サバンナに今でも住んでる哺乳類で直立するのは人間だけ。アフリカは確かに暑いが、ライオンもシマウマもガゼルもハイエナも、みんな炎天下に毛皮である。実際のところ、体毛があったほうが、直射日光を遮断して体温を低く維持するには好都合だという。しかも、人間は、サルにはほとんどない皮下脂肪をたっぷり蓄えている。暑いから毛を無くしたのなら、なんで皮下脂肪を蓄える必要があるのか。

こういう疑問に対する解決が、人間はサルから進化する過程で、何百万年かの間、水中生活、あるいはそれに近い環境で生活を送っていたのではないかという「アクア仮説」だ。

クジラやシャチ、イルカといった水棲哺乳類は、体毛がなく皮下脂肪をみな蓄えているという点で、あきらかに人間に近い。水中で生活するなら体毛は要らない。水中で過ごすことの多いカバやサイも体毛のない哺乳類だ。ゾウですら、過去には水生であったのではないかという証拠が見つかっているらしい。

直立歩行についても、水中を泳ぐために、より流線型に肩と足の関節のつき具合が体軸に沿った方向に進化したのではないかと「アクア仮説」は言う。ちょうどペンギンが直立しているように。

この説は、提唱されてから、ほとんどすべての進化論学者、動物学者から無視に合い、学説としては認められていない。まあ、確かに、ちょっと荒唐無稽という気もする。この本の著者、エレイン・モーガンにしても、科学者ではなく英文学者である。

「アクア仮説」を取れば、説明しやすい人間の特徴も確かにある。しかし、例えば水中でもっぱら暮らすといっても、ビーバーやラッコには毛皮がある。カバは水を好むが直立などしない。水辺で暮らすとすべて体毛が無くなり、直立するかというと、色々と例外があるのは事実。まあ、カバが直立歩行したら怖いよな。

大昔に海や川で暮らしてたにしては、人間は習わないと泳げない。カナヅチの人がいるのも不思議だ。もっとも、ゼロ歳児は、いきなりプールに放り込んでも、水の中で眼を開けて自由に泳ぎ回ることができるらしいが。

まあ、いったい何が、おサルと人間を分かったのか、いまだに謎だらけだ。そうそう、そういえば、今月にはティム・バートン版「猿の惑星」が封切。人間に代わってサルが支配する未来の地球を描いたのが昔の「猿の惑星」シリーズだった。なぜ、サルが進化して、人間を凌駕するようになったのかという背景が、シリーズ最終作にいたって明らかになり、それが第1作につながるという、なかなかヒネリの効いたシナリオに感心した覚えがある。さて、ティム・バートン版は、どんなもんだろうか。