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2000/05/16 スーツ姿のホームレス 

昨日の夜は、「スーツホームレス」(小室 明/海拓舎)を読む。「サラリーマンが路上生活者になるとき」なんて怖い副題がついている。都内には、何十年も路上暮らしをしてる筋金入りのホームレスもいるが、最近はサラリーマンやフリーターからホームレスになる人が増えてるのだそうだ。これは、著者による、路上生活者へのインタビュー集。

取材した中には、証券会社のサラリーマンだった人もいて、いまだにスーツにネクタイしめて路上生活をしている。まだ20代で会社を辞めて、無職ホームレスになったある若者は、新宿公園のダンボールハウスにいるのだが、「肉体労働なんて下賎な仕事はできませんよ」と話す。一般的には、ホームレスより、額に汗かいて金を稼ぐほうがずっと立派だと思うのだが。

リストラで職を失い、奥さん子供から愛想をつかされて家から追い出され、ホームレスになったというサラリーマンもいる。これも実に気の毒である。それにしても失業したからといって、家から追い出すとは、鬼のような家族であるが、ま、そういう究極の選択に至るまでには、他人には分からない色々な事情があるのだろう。

しかし、インタビューを読むと、サラリーマンからホームレスになったって人は、やはり、規則がきらい、組織になじまない、しかし、あんまり覇気もなく責任感もない、どこか変わった人が多いような気がする。

養うべき家族もあって、職もあった時には、無理してでも会社勤めを我慢してたのだろうが、何かの拍子にタガが外れると、あとは転落の一途。失業、離婚と続いて、あれよあれよという間にホームレスまで行き着いたという感じの人ばかり。人間、上昇するのは困難でも、転落するのはアッという間だ。リストラ流行のこの御時世だし、もって他山の石としなければ。明日は我が身なんてことだってありうるよなあ。はは。

それにしても、住み込みの職を見つけるなり、生活保護を受けるなり、なにもホームレスにならずともよかろうと思うのだが、ここまでくると、スーツホームレスの本人達が、会社や家族の呪縛から逃れて、逆に気楽な人生を楽しんでいるようにさえ見えるのが、わずかばかりの救いだろうか。