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2000/01/23 「サイエンス・ミレニアム」

昨日購入した「サイエンス・ミレニアム」(立花隆/中央公論新書)を読了。

ニュートリノの謎、性転換手術の最先端、鯨の生態を観測する宇宙衛星計画、地球誕生から46億年の歴史を辿る「地球史プロジェクト」、DNAから脳神経形成の謎を探る、環境ホルモン、と6つの分野におけるそれぞれの専門家と立花隆が対談して、科学の最先端で何が起こっているかレポートするというもの。どのテーマも、立花隆の話の進行が的確で、たいへんに面白い。こういうレポートをするというのは、本人もかなりの予備知識がないとできないだろうなあ。感嘆するばかりである。

ソクラテスやプラトンの生きた、哲学と科学がほとんど同義であった時代は、はるか昔に過ぎ去って、いまや自然科学のフィールドの地平は、ひとりの人間がすべてを鳥瞰するにはあまりにも広大だ。いつか、大自然のすべての謎と法則をすべて、人類すべて解き明かしたと宣言する時は来るだろうか。そして、その時には、その膨大な知識は、果たしてひとりの人間の頭脳に収まりきれるようなものなのだろうか。

素粒子理論でノーベル賞を受賞した理論物理学者のファインマンは、恐るべき天才的頭脳と、ユーモアあふれるエッセイでも有名だが、晩年には後輩科学者に、「君達は気の毒だ。重要な科学的発見は既にすべてなされてしまった。科学には、もう何も発見すべき物は残っていない」と悲観的なことを言うようになったそうだ。

それは、ファインマンが自らのガンを知り、余命いくばくもないと知ってからの悲しい諦観であった。該博な頭脳や、蓄積された経験や、理論や知すら、生物としての個体の死と共に消滅してしまうのは悲しい現実である。しかし、知の探求の後を継ぐ後継者によって、ファインマンの時代にすら知られていなかったことが、今では次々に発見されつつあるようだ。万物を構成する素粒子はすべて発見できたのだとして、重力を含むすべての相互作用を説明する「統合理論」、「万物理論」は果たして存在するのだろうか。

ニュースを見てたら、成田きんさん107歳で死去である。まあ、天寿まっとうされましたな。もっとも、TVやCMに引っ張りまわさなければ、110歳くらいまでは生きたような気もするんだけど。そういえば、人間の寿命にも上限ってものがあるのだろうか。単に細胞分裂で遺伝子がコピーされるときの欠損や誤りが累積されて確率的に個体全体の効率が悪化してゆくのか、それとも何らかの理由で細胞コピーの回数にカウンタが設定されていて、それが天寿なのか。ま、世の中には、まだ色々解決されてない不思議はあるよなあ。