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2000/01/08 日本の牛乳は腐っている

別冊宝島436「食材の常識が変わる本」(宝島社)を読んでいて、アメリカで感じていた疑問が氷解したので記録しておこう。

日本に来た欧米人が、日本で売っている牛乳を飲むと、思わず、「腐っている」と感じて吐き出すことがあるのだと、乳製品の項を執筆した平澤正夫は言う。欧米人にとっては、日本の市販されている牛乳には独特のコゲ臭さ、硫黄の匂い、ゴムのような匂いがあって、欧米の牛乳よりドロリとしているように感じるらしい。

これは、日本の牛乳が超高熱滅菌処理をしているのに対し、世界の牛乳のほとんどは低温殺菌処理を行っているからなんだそうだ。牛乳はそのまま放置すると雑菌によって腐敗しやすいが、摂氏63度で30分加熱すると品質を壊さずに保存期間が延びる。そもそもはワインの腐敗防止に取り組んだ細菌学のルイ・パスツールの発見で、こういう処理が低温殺菌処理。牛乳の風味を逃さずに殺菌された牛乳をパス牛乳(パスツーリゼーション牛乳)と称し、これが世界の標準だ。

反対に日本が牛乳に対して行っているのは、高圧下で120度以上に加熱し、2〜3秒の滅菌処理を行う、超高温滅菌という工程で、この処理の過程で日本の牛乳独特のコゲ臭と蛋白質の変質が生じるのだと著者は言う。

欧米でも確かに超高温滅菌処理された牛乳は存在するが、通常その牛乳は、滅菌処理されたパックに充填され、常温でも数ヶ月から1年の保存に耐える。これはパス牛乳に対して、UHT牛乳と呼ばれる。つまり、牛乳本来の風味は落ちるが、保存期間が非常に長い、特殊用途の牛乳。

オーストラリアの乳学者、J・M・コックスは、日本の牛乳を、「パス牛乳とUHT牛乳の悪いところだけを混ぜて作った牛乳」と称した。つまり保存期間は普通のパス乳と変わらないが、風味は超高温滅菌のため著しく落ちる。まったくいいところ無しである。超高温滅菌をしているのに、UHT乳ほど保存期間が長くないのは、滅菌していない紙パックを使用しているからだ。

そもそも、なんで日本の牛乳がこうなってしまったのかというのも不思議な話だが、森永や雪印といった大手乳業メーカーは、牛乳に砂糖を入れてグツグツ煮て作る練乳メーカーから始まっており、高温殺菌に抵抗が無かったのではないかというのが著者の推測だ。その他にも、大量生産と遠隔地への流通には、超高温滅菌のほうが向いているということもあるだろうし、昔は日本人自体に、乳製品に対するなじみがなかったために、牛乳本来の風味などというものを大して気にもとめなかったのも事実だろう。

で、実際の体験を思い起こしてみると、確かにアメリカのスーパーで買う牛乳のほうが、ずっとサラサラしていてあのムっとくるような臭気が無いのである。ローファットミルクが主流なんで、乳脂肪を抜いたせいで、日本のに比較してあっさりして味が薄いのだとずっと思っていたが、牛乳の殺菌方法に原因があったのだとは知らなかった。

子供の頃から日本のコゲ臭牛乳に慣れてしまうと、低温殺菌されたパス牛乳のあっさりサラサラした口当たりがいかにも物足りなく感じるものなのだそうだ。そういえば、他の駐在員でも、アメリカの牛乳は薄くてマズイなんて言う人が多かったが、日本の牛乳の風味のほうが、実際には世界の標準とはかけ離れているとは、なんだか騙されたような気分だなあ。