正月休み中にDVDで「ビューティフル・マインド」を見た。アカデミー賞で作品賞・監督賞・助演女優賞・脚色賞の主要4部門を獲得し、日本では2002年春に公開された映画。
このDVD自体はDVD化された直後に買ったんだと記憶してるけど、どうも見るタイミングがなくてビデオラックの奥で埃を被っていた。恐らくありきたりな愛と感動の物語だと勝手に思い込んでいたからだろう。たまたま年末に大掃除したら出てきたこのDVDの裏書でこの物語がゲーム理論でも何度も耳にする「ナッシュ均衡」のジョン・ナッシュ氏の半生を描いたものだと知りビックリ。早速見てみた。
見てまたビックリ。ナッシュ均衡は知っていたがジョン・ナッシュ氏自身については予備知識の無かったオレにとってはその内容は衝撃的だった。逆に知らなかったからこそ純粋に楽しめる映画だったと言えるかも。
この映画は感想書こうとすると全てがネタバレになってしまうのが苦しいところだけど、ジョンナッシュやナッシュ均衡の事を知らなくても、いや知らない方が、のめり込める映画。この映画はあらすじやネタバレレビューを決して読まないで見て下さい。シックスセンスみたいに。次から次へと予想を裏切る展開に一瞬も目が離せない、あっというまの135分になること請け合い。お勧めです。
以下、ネタバレ備忘録なのでこれから見る人は読まないで
↓(反転させて読んでください)↓
最初は単にスパイモノのサスペンスかと思って見てたらなんと幻覚かよ!?で、またパーチャーが出てきて「更に暗号は高度になった」なんて言うから「いやいや、統合失調症ってのはやっぱりソ連に嵌められてただけなんだ」と思い直しかけさせられて、やっぱり幻覚だっつー中盤のどんでん返し。そのおかげで最後の最後までどこからどこまで正気で、どこからが幻覚か疑いながら緊張感を持って見ることが出来た。だって図書館で出会う学生まで幻覚じゃないかと疑いながら見てたし。
で、話が分かってもう一度見直してみると、ちゃんと幻覚は幻覚、事実は事実と丁寧に一線を置いた描写をしてるんだよね。ところが初見だとストーリーに引き込まれちゃって夢と現の境目を見失ってる、つまり見てる側もジョンナッシュの心理状態を味わえるのがこの映画の凄い所だと思う。
鑑賞後に色々調べてみると、実物のジョンナッシュは妻アリシアと若い時期に一度離婚(その後再婚したらしいが)しているし同性愛だったり反ユダヤ主義だったりした事実もあるそうだ。だからこの映画を単純にジョンナッシュの半生の映画化として見れば美化しすぎで胡散臭いものになるんだろう(ここら辺については「もうひとつのビューティフルマインド」に興味深い考察が書いてある)。ただ、映画の脚本を書いたアキーバ・ゴールズマン氏は、父がセラピスト母が児童心理学者で自宅に自閉症の子供の施設が有ったという体験を元に「脚本の中で現実と妄想の境界線を探り出したい」という意図を見事に達成できたと思う。アカデミー賞では「脚色賞」を受賞した本作品だが、これはゴールズマン自身「これはナッシュの人生そのままではない。大筋を生かしつつ、半分はフィクションになっている」と語っている通り思い切って「脚本賞」にしても良かったのではと思うほど脚本が優れていた。いや、もちろん幻覚でカーチェイスと銃撃戦はやりすぎかも知れないが、そんな極端な脚色のお陰で「現実と妄想の境界線」を浮き立たせる事が出来たように思える。ゴールズマンの目論見は見事に嵌った。
ラストのノーベル賞授与式でのスピーチも感動的なんだが、個人的に気に入ったのはジョン・ナッシュがアリシアにレストランでプロ-ポーズする時のやり取り。永遠の愛を確実にする何かが欲しいと焦るジョンに、宇宙の広さを信じる事を例えて愛は信じる事と諭すアリシアには痺れた。
ちゅうことで新年早々遊就館とビューティフルマインドで泣かされ捲ったオレでした。

