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[生まれ変わった名器] ベン・ホーガンパーソナルウッドの削り直し


フェースのビス ベン・ホーガンのパーソナルウッド1,3,4Wを信じられないような値段でゲットしたことは、このあいだの記事に書いた。

 基本設計が久津間さんということで、工房でいろいろと話を聞いていたら「もっておいでよ」という話になり、フェースの削り直しをしていただくことになりました。

 今、パーシモンの修理ができるショップというのは数えるほどしか存在しない。技術はあっても、商売としてとても成り立つようなものではないということもあるのだが、悲しいことである。

 写真はフェースインサートを止めてあるネジである。おっほっほ、見事に4本とも頭をねじ切ってあります。ええ、私がやりました( ̄^ ̄) ← だめ 久津間さんが「勉強だから、ネジは自分で取ってね」と1本お手本を見せてくれて、あとは見よう見まねで自分でやるんです(汗)。蟲仲間はある程度工房に通うようになると、クラブの基礎をみっちりとたたき込まれて(もちろん、自分から聞かないと教えてくれませんけどね)、基本的な修理や調整は自分でやるように(やらされるように・・笑)なります。

 フェースインサートを止めているネジをはずす・・
ねじ回しで回せばいいだけだと思うでしょ? 甘い! ← (T_T)

 塗料で埋められてネジを掘り出し、焼きゴテで加熱して接着剤を柔らかくしてからハンマーで叩いてゆるめ、ねじ回しで回す。久津間さんがやると数分で取れちゃうんですけど、私がやると・・数十分かかって上の写真のように久津間さんの仕事を増やしただけ・・ ← 負け

 完全に折れてしまったネジはドリルで穴をあけて逆タップのような工具で回してやる。それでもだめならドリルで完全に削ってから穴を木の棒で埋めてから再びドリルで穴をあけてネジを切るんです。右の写真はドリルで削った穴に木の棒を詰めているところ。写っているのは久津間さんのゴッドハンドです(笑)。「プラモデルより易しい」なんてコンポーネントメーカーの宣伝がありますが、あんなの子供の工作以前の作業ですな・・

フェース 写真はネジが取れて(久津間さんが抜きました・・)、ヤスリで削り直しをしたドライバーのフェース面。

 フェースを削るというのは素人には想像もつかないような高度な作業です。知っている人はわかるでしょうが、ウッドのフェースは平面ではありません。左右と上下にラウンドがついており、バルジと呼ばれていますが、久津間さんのクラブにはさらにもうひとつのパラメータによる曲面が組み込まれています。

 ヤスリを手にして繊細かつ、大胆に削っていく様は見るモノを圧倒します。クラブの顔つきがみるみる間に変わっていき、まったく異なったクラブに生まれ変わる瞬間ですな。ベン・ホーガンのパーソナルは久津間さんが基本設計されていますが、ベン・ホーガン社のデザインの制約を受けているため、当たり前ですが久津間さんの作るブラック・パワーとは顔つきが異なっています。今回の削り直しで、顔つきはベン・ホーガンのそれではなく、久津間さんのパーシモンに近づきました。
フェース比較
 写真が削り直す前の顔(左)と、削った後の顔(右)。

 ドライバーは前の所有者の方が、リペアに出して一度削り直しをしていたので、オリジナルのベン・ホーガンとは微妙に異なっています。

 3W、4Wの比較写真を撮れば良かったのですが、ドライバーしか撮ってなかったのでこの写真で勘弁してください(笑)。

 トップラインがシャープになって、美しい曲面に仕上がっています。とくにヒール側が広くなり、フェース全体が大きくなっています。フェース全面、どこで打ってもイメージするボールがでるようになっており、クラブの機能は大幅にアップしています。

スコアライン入れ 上の写真ではフェースを削り直したために、スコアラインがなくなっています。

 左の写真は、あたらしいスコアラインを入れている所。

 線を引いてマシンで溝を・・そういうイメージがあったのですが、驚くなかれ、久津間さんは鋸を手に一気に直線をひいてしまうのです。まさに神業・・

 碁盤や将棋盤の線を、職人さんが日本刀に墨をのせて寸分の狂いもなくひいていくような感じでみるみるまにフェースが甦っていきます。今回、一連の作業を見せていただけただけでも恐ろしく貴重な体験だったと思います。いや〜、パーシモンってのは生き物みたいなんですけど、作り手というか、職人さんの魂が宿っているんですね。納得、納得・・

 というわけで、フェースの削り直し作業が終わったのが右の写真。

 ただし、フェースの塗装は自分でやりました。とにかくパーシモンについては「自分で体験しなさい」が久津間さんの指導なんです(笑)。

 アクリル系の塗料を繰り返し塗って、6回ほど塗り重ねたのが右の写真。結構、良い感じになってきました。

 往年の名器である、ベン・ホーガンのパーソナルウッドが久津間さんの手によって新しい命を吹き込まれた首領SPとして甦ったわけです。来年は、かならず「平背柿L字コンペ」という謎のコンペをやるつもりですので、この首領SPで参戦予定です、はい。

 首領のお薦め度: パーシモンには魂が込められているのぢゃ!・・・・ 80点

(C)ゴルフ虎の穴 首領